季節とともに古き時代をいつくしむファミリーライフ

Monika Luukkonen

クリスマスまであと2週間と迫った頃、カラヨキの歴史地区プラッシ(Plassi)にある2軒の古いフィンランドスタイルの家をリノベーションしたフィンランド人とアイルランド人カップル、オーゴマン(O’Gorman)一家に会いに行ってきました。

そこではウィリアムとヘイディと4歳の娘ビリヨが暮らしています。(わたしも我が娘アマヤ(雨夜)を連れてゆきました。なのでアマヤ(右端)も写真に一緒に映っています!)
ヘイディとウィリアムは、ヘイディがカラヨキの姉妹都市である出雲市で働いていた10年前に、同じく日本でのJETプログラム(Japan Exchange and Teaching Program:

語学指導などを行う外国青年招致事業)で来日していたウィリアムと知り合ったのだそう。

カラヨキと出雲市には、海辺に面したロケーション、砂浜や風力発電所があって、漁業で生計を立てている人々が多い、といったたくさんの共通点があるのよ。とヘイディが説明してくれました。
ウィリアムとヘイディが暮らす旧市街プラッシ(Plassi)エリアは5,6百年前より貿易や商業の盛んな(漁業、松ヤニの製造所など)時代の中心地だったのです。

川や海辺に面したそのエリアは貿易や運輸の拠点としてとても理想的だったため、

その後、漁民や職人の居住区として人気が高まっていったとのこと。
ヘイディとウィリアムの住む家は完全な“古民家”とは言い切れないけれど、古さを存分に生かしながら絶妙なさじ加減でモダンに改装を施した古い木造の家に住んでいます。

室内に目を向けてみると、バスルームや玄関ホールを新しいコンクリートの床にし、壁紙を貼って壁面をよみがえらせていました。一方、ふたりは古い生活道具も現役として活躍させていて、調理の際に使う薪ストーブを当時のまま日常的に使っています。
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この夫婦がなぜこのカラヨキの海沿いの小さな町に暮らすことを決意したのかとても興味津々だったので住まうまでの経緯を聞いてみました。

彼らのストーリーを紐解いてゆくと、ヘイディはもともとカラヨキの近くに住んだことがあり、結婚後、夫婦となって改めてこのエリアに戻る機会が巡ってきたとのこと。(フィンランドの他の町や海外での生活は考えられずに。)

二人とも安全で穏やかな暮らしが営めるカラヨキにとてもよい印象を持っていて、自分たちの暮らしに必要なすべてがそこにあるように思えたそう。ヘイディは町の近くにある出版社の企画開発マネージャーとして働き、ウィリアムはカラヨキ町の国際部マネージャー:教育に関することやEUの資金調達業務その他国際プロジェクトに関することーとして働いています。

ヘイディとウィリアムは、はじめカラヨキ砂丘の近くに新しい家を建てて住んでいましたが、ヘイディはずっと古民家に暮らすことを夢見ていました。そしてウィリアムはというと、川沿いに暮らすことが長年の夢。そしてふたりとも歴史が感じられるモノや価値にとても魅力を感じているように見えました。
古い家を丁寧に手入れし続け、大切にしてゆくことは、歴史を大切にしてゆくこととも言えます。「もはやわたしたち、ある意味で古いこの家の一部になっているの。」ヘイディは言います。ヘイディはどんなときも建築やインテリアデザインに夢中で、夫婦揃って古民家の改装を通して新しい生活スキルを習得していくことに、このうえない喜びを感じているそう。

「あなたも古い家に住むとしたら、それは移ろう季節をより肌で感じながら季節とともに住まうことだ、ってきっとすぐに実感するはずよ。」ヘイディは続けて語ります。
ウィリアムは一昨日、この冷え込む時期に少しでも暖かさを維持できるように降り積もった大雪を雪かきしながら家の土台周りに固めて家の断熱を強化したり、よりたくさんの薪を蓄えたばかりだよ、と説明してくれました。(ちなみに彼らは古民家改装にあたり、環境にやさしい断熱材を壁や床に使っていました。)

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雪は断熱のために使われ、リサイクルペーパーは環境にやさしい断熱材です。

仕事から戻ってくると、家の中ではとたんにリズムが変わるんだ。ウィリアムは興奮気味に語ります。例えばゆっくり火をつけて明かりを灯す、とか。一見、なにもかも時代遅れで時間がかかるように思えるけれど、得も言われぬくくつろぎがもたらされて、仕事のストレスや心の中でつい気がかりになっている様々な課題からすっと解放されるんだ。古い家に暮らすということは、日常のペースを少しずつスローダウンしてゆくのにうってつけなんだよ。


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同じ敷地内に、オーゴマン一家はもう一棟の建物を所有していて、すでに新たな改装プランが練られているようでした。一緒にブランチをとってから、わたしたちは屋外に出てその大きな建物の中を見せてもらうことにしました。

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この大きな建物の中で、古い壁紙の下に埋もれていた昔の新聞を目にし、またしても歴史がよみがえる瞬間に遭遇しました。

なんと1886年からの新聞を目撃したのです!

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もともとはヘルスセンターとして使用されていたこの古い家屋を、オーゴマン一家が今度はどんなふうに改装し、古さを生かしながら新しい生活空間へと変えてゆこうと企んでいるのかしら、と凍てつく川に面した窓に映る美しく静かで雪深い冬景色を眺めながら想いを馳せたわたしでした。

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そして、冬の時期はあえて暖房を入れず、夏限定の“避暑スペース”として使われる大きな部屋に足を踏み入れながら、夏になるといったいどれほどの夏の陽射しやぬくもり、豊かな自然の緑がこの住まいやそこに住まう人々を幸福感いっぱいに満たしてゆくのだろうと想像してしまいました。

ふたたび屋外に出てみると、目の前に広がる大きな庭は夏になると緑の装いに様変わりして家族がバーベキューや外ごはんといった夏ならではのアクティビティを楽しみ、夏ならではのビリヨの遊び場として使われていくのだろうな、と思いをめぐらせました。
私が取材させてもらったその日の庭の様子はというと、ヘイディとウィリアムが据え付けた巣箱に冬鳥たちがやってきて、楽しそうにパン屑をついばんでいましたよ。

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オーゴマン一家の日常は、自然や古き時代とうまく調和したフィンランドのライフスタイルの中でもとても印象的ですばらしい暮らしかたのお手本のひとつなのです。
ヘイディとウィリアム、そして彼らの改装プロジェクトについて気になる人は、こちらのインスタグラムアカウントをフォローしてみてくださいね。instagram.com/neverfinnished

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モニカ・ルーッコネン:フィンランドのライフスタイル専門家でノンフィクションライター。モニカは日本でフィンランドのライフスタイルの本を複数出版しています。彼女の最初の著書『ふだん着のフィンランド』グラフィック社 2015年

http://www.graphicsha.co.jp/detail.html?p=31593

『フィンランド人が教えるほんとうのシンプル』 ダイアモンド社 2016年 http://www.diamond.co.jp/book/9784478069233.html

三冊目の著作が2018年2月に上梓される予定です。

翻訳:Miki Kanda

写真:Monika Luukkonen